獣人達の動きは迅速で無駄が無かった。
オルガも炎で獣人を焼き殺し梓を守ろうとするが、全てを殲滅するには至らない。
梓は身構えた。
梓が身構えた所で、牙を剥き出し襲い来る獣人に出来る事は無い。
でも、と思う。
楓の生命を奪った魔獣を許すわけにはいかなかった。
差し違えてでも…そんな考えが頭を過ぎる。
人狼との距離は既に、互いに攻撃が届く間合いにまで縮まっていた。
しかし、瞬発力の違いから、梓は完全に出遅れていた。
このまま数瞬後に、梓は殺されるだろう。
―誰もがそう確信した瞬間、人狼の身体が縦に真っ二つになった。
見慣れた後ろ姿。
「…間に合った様だな…」
聞き慣れた声。
梓の前に立っているのは紛れもなく現「0組」担任であり、特務討伐隊第2小隊・隊長「神薙 悠」だった。
「…任務から戻って早々に戦いとはな…うちの生徒が世話になった様だ…礼はさせて貰うぞ…」
悠は魔獣を見据え、言い放つ。
「…先生…」
梓は呟くと、全身の力が抜けたかの様に座り込み、涙を流した。
―そこからは凄まじい戦いだった。
魔獣は更に数を増し、100匹を越す大群となったが、2人の隊長格の前に屍の山を築くばかりだった。
見ている全ての人間が呆然とするしかない…それ程までに一方的だった。
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- 2013/04/26(金) 15:34:25|
- 第2部 C.E1093~
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